「死」とは、誰もが避けられないもの。高齢化が進む日本社会で、近年ますます問題になっているのが「孤独死」です。「孤独死」とは、一人暮らしをしている人が、誰かに看取られることなく、ひっそりと亡くなること。
核家族化が進み、地域社会との関わり合いが薄れた今、誰にも看取られずひっそりと亡くなる方が、とても増えているのです。孤独死を遂げてしまうと、発見まで時間がかかることが多く、ご遺体が腐乱してしまい、住居が汚染されることが社会的な問題となっています。
実は孤独死には男性がなりやすい、というデータもあります。今回の記事では、なぜ男性に孤独死が多いのかという理由や、対策までご紹介していきます。孤独死を防ぐためにできることを知っておけば、いざというときにきっと役立つでしょう。
高齢者だけではない!「孤独死」の約7割が男性
孤独死を遂げるのは、何も高齢者ばかりではありません。まだ若いのに……!と言われるような年齢層にも、孤独死をする人は増えています。そして実に、「孤独死」する方の約7割が男性であると言われています。
在宅死の半数が孤独死である現実
近年では、病院よりもご自宅で亡くなることを希望する方が多くなっています。しかし、今在宅で亡くなる方のおよそ半数が孤独死であるというのです。孤独死というと、独り身の高齢者を思いうかべるかもしれませんが、亡くなるのは高齢者ばかりではありません。若い男性の孤独死が増えているというショッキングなデータもあるのです。
40代から増える男性の孤独死
孤独死をする男性は70代が一番多いですが、実は40代からじわじわと増えていく傾向があります。長引く不況から、結婚よりも未婚を選ぶ人の増加、リストラや離婚、さまざまな理由から一人で暮らす人が増えています。男性は、女性に比べ、食生活や家事などの身の回りのことがおざなりになりがちです。
そのため病気を招く結果となり、先進医療が充実していると言われる日本でも、若くして孤独に死を迎える男性がふえているのです。
6割以上は「病死」である
多くの一人暮らしの男性は自炊をせず、そのため栄養が偏り、生活習慣が乱れがちです。その結果、糖尿病などの生活習慣病になりやすくなります。その状態が悪化して歯周病や認知症を招いてしまうのです。
また男性は、仕事一筋で家庭内のことはなかなかできないという方が多く、掃除や洗濯もおろそかになりがちです。その結果として食生活と居住環境の悪化が原因で、病気にかかり、とうとう孤独死してしまうというケースが多いのです。
なぜ孤独死する男性が多いのか?

一体、近年ではどうして孤独死をする男性が多いのでしょうか。その原因は、核家族化などの社会状況の変化にありました。
孤独死が増えているのはなぜ?
都市への人口過密化による地域コミュニティの崩壊で、人々の生活環境の変化し、孤独死を招く状況が当たり前のことになってきました。社会状況の変化とともに、一人で亡くなる方が多くなるのが当然という状況がやってきたのです。
・独身世帯の増加
昔では、おせっかいな知り合いのおばさんが見合い話を持ってきてくれる、というようなケースも多くありました。しかし地域コミュニティが崩壊し、恋愛結婚が社会に浸透近年では、結婚しない人も増えています。親元に暮らしていても、両親が亡くなった後は、子供も一人暮らしとなります。その後は独身のまま高齢となり、孤独死してしまうのです。
・親子や親せき、近所付き合いも希薄に
結婚して家族ができると、家族以外の人との関わりが薄くなりがちです。また子供が独立して家を離れてしまうと、なかなか親と連絡を取りたがらなくなるものです。
家制度が崩壊し、兄弟や親戚づきあいも薄れ、個人を大事にする世の中の流れもあり、地域社会との関わり合いも少なくなりました。こうした時代の流れから、家族、親族や地域社会のネットワークから、個人と個人が切り離された状態になったのです。孤独死が増えているのは、このような社会的背景があります。
一人暮らしの高齢者が送る孤独な日常
多くの1人暮らしの高齢者が人と会話をするのは2、3日に1回であるという、驚くようなデータもあります。一人暮らしの高齢者が日常の中で人と会話をすることは圧倒的に少なく、近所づきあいも薄いということが明らかになっています。
男性の一人暮らしでは、独り身の寂しさから、酒浸りになるケースも見られます。悩みを相談できる相手もおらず、いざという時に頼る人もいないとう状況では、ストレスもたまり、自己管理もおろそかになりやすいものです。このような環境では、次第に心や体に不調が起こってくるのは当然かもしれません。
孤独死する男性の特徴とは?
孤独死をする男性には、共通する特徴があります。孤独死する男性には、主に以下のような特徴が見られます。
・料理や清掃ができない
今まで仕事一筋だったサラリーマンなどは、なかなか家事をする機会もありませんでした。妻と離婚したり、先立だれたりした場合、自分で料理や掃除などの家事をすることができず、健康状態が悪化してしまう場合が多く見られます。その結果として致命的な病気にかかり、誰も助けを呼ぶことができずに死を招いてしまう、ということになりかねません。
・コミュニケーションが苦手
男性は一般的に、女性よりもコミュニケーションが苦手とされています。女性は右脳が発達しており、悩みを誰かと共有しあう能力に優れているといわれています。しかし、男性は左脳が発達しているため、目的がはっきりした論理的な会話は得意ですが、悩みや寂しさを共有しあうことは苦手です。そのため仕事を退職した後は、人間関係が希薄になり、孤独に陥ってしまうケースが多いようです。
・経済的に困っている
長引く不景気による突然の解雇、会社の倒産や年金の受給額の引き下げなど、様々な理由により経済的に困っている人も、孤独死を招きがちです。食生活がおろそかになり、人付き合いを遠ざけたりしがちです。
・病気で引きこもりがち
持病やケガがあっても、人間関係が希薄だと、治療をおろそかになることもあります。病院な治療院に定期的に通っているのならまだいいですが、体調が悪化し外に出るのもおっくうになり、そのまま亡くなってしまうこともあります。
孤独死による経済的な影響を知ろう
孤独死による経済的な影響も、見過ごせません。孤独死というと、誰にも看取られずに亡くなる方の悲哀に注目が行くのですが、実は孤独死による経済的な影響も大きな問題となっているのです。
孤独死による損害は平均60万円という現実
人が亡くなって、誰にも発見してもらえない状態が何日も続くと、当然ご遺体は腐敗して悪臭などが部屋を汚染してしまいます。汚染された部屋には、害虫駆除や特別な消臭を施さなければならず、そのような特殊清掃に高額な費用がかかることが問題となっています。
実に平均で60万円という費用が、孤独死で汚染された部屋の原状回復にかかると言われています。身寄りがいない場合、大家さんが負担をするしかなく、孤独死による経済的問題が多くの家主を悩ませているのです。
家主が加入する孤独死保険
孤独死をした後の部屋は、ひどい悪臭で汚染され、特殊清掃という特別な清掃を業者に頼まないと、原状回復ができません。また孤独死で人が亡くなった建物は事故物件として扱われ、市場価値が下がってしまいます。
そのような状況を受け、家主を対象にした「孤独死保険」というものが注目を集めています。孤独死した入居者がいた場合、原状回復にかかる費用や、事故物件となってしまい収入が減ったときの補償もしてくれるというものです。いざというときに、マンション管理のリスクを補ってくれる、このような保険は今後家主にとっては不可欠になるでしょう。
今後は入居者加入の孤独死保険が増える
身寄りのいない高齢者には、孤独死のリスクが伴うため、なかなか住まいを借りることができないのが現状です。実際のところ、孤独死のリスクがある高齢者に住まいを提供するには、リスクを賃料に折り込んだ上で、貸すというのが現実的です。そのため、今後は一人暮らしの高齢者の入居希望者に対し、孤独死保険に加入することを入居の条件にする物件が増えていくでしょう。
孤独死を防ぐにはどうしたらいいのか?

社会状況の変化もあり、私たちは誰もが孤独死と無縁ではいられないような世の中になりました。何とかして孤独死を防ぐことができないものでしょうか?
仲間を作って孤独死を防ごう
男性は退職してしまうと、なかなか人間関係を築くのが難しいものです。そんなときは、お酒の力を借りるのも1つの手です。居酒屋やスナックなどの行きつけのお店を作っておけば、ママに話し合い手になってもらえます。運がよければ、悩み相談の相手になってもらえるかもしれません。
定期的に通っていれば顔なじみの客もでき、同じような年代の仲間ができるでしょう。居酒屋やスナックが仲間と集う居場所になれば、独り身の寂しさも薄れ、生きる張り合いにもなります。
「既読」機能がついているアプリで安否を確認
スマートフォンを持っている方なら、「既読」機能がついているアプリに登録しておくと、相手に安否を知らせることができます。このようなアプリの便利な点は、メールと違って、読んだことが相手に伝わる「既読」機能があることです。「既読」がつかないときは、何かあったのかと相手が安否を確認するのに役立ちます。もしスマートフォン同士であれば、「既読」機能がついているアプリに登録しておくことを、おすすめします。
健康な心と体が孤独死を防ぐ
孤独死を防ぐには、何と言っても健康管理をするにつきます。それには、バランスのとれた食生活を心がけ、衛生的な住環境を保つことがまず大切です。その上で適度な運動をし、仲間との交流を築いていけば、孤独死とは無縁の生活が送れることでしょう。
体の面で、何か気になることがあれば早めに治療をし、主治医からアドバイスを受けることも大切です。心と体は、常に連動しています。体を健康に保つために自己管理をすることで、心の状態も安定していきます。孤独死にならないよう、一人暮らしの方は生活習慣を振り返ることが大切です。
まとめ
未婚化や高齢化社会がますます進む現代社会において、孤独死は誰もが避けることのできない課題となりました。孤独死に男性が多いというデータの裏側には、家事や炊事が苦手など、男性ならではの問題がありました。
しかし社会の中に居場所を作ることによって、孤独死する男性を減らしていくことは可能です。周りに一人暮らしの高齢男性がいらっしゃるという方は、ときどき連絡を入れてあげてはいかがでしょうか。この記事が孤独死を防ぐために、少しでもお役に立てれば、幸いです。